〜トラウマ(心の傷)と向き合うために〜
「そんなこと、誰にでもあるよ」
「それぐらいで落ち込むの?」
…そんな言葉が、心に深い傷を残すことがあります。
ある人にとっては何でもないような出来事が、
別の人にとっては、その後の人生に影を落とすほどの「壮絶な体験」になることがあります。
それが、トラウマ(心的外傷)です。
トラウマは“出来事”ではなく、“その人の受けた衝撃”にある
トラウマとは、事故や災害、暴力、喪失、病気など、強いストレスや恐怖にさらされた経験によって心に残る傷のことを指します。
ですが、重要なのは「何が起こったか」よりも「どう感じたか」です。
たとえば:
- ちょっとしたケガ → ある人には「もう終わったこと」、別の人には「怖くて眠れなくなるほどの記憶」
- 入院や手術 → 周囲は「よくあること」と言うけれど、ご本人は「命の危機を感じた恐怖」で今も苦しんでいる
- 介護や看取り → 家族が見せた表情や言葉が、心に深く残っている
他人から見れば「たいしたことがない」ように見える体験でも、
本人にとっては「心を揺るがす出来事」だったということは、少なくありません。
私たちは「見えない傷」にも寄り添います
訪問看護・訪問介護の現場では、
身体だけでなく、心のケアも非常に重要です。
- ちょっとした音や匂いで過去を思い出し、動悸がする
- 知らない人に触れられることに強い抵抗がある
- 会話や介護そのものを拒むようになってしまった
こうした反応の背景には、過去のトラウマが影響している可能性もあります。
私たちは、「今、目に見えている症状」の奥にある心の声にも耳を傾け、
安心できる関係づくりから始めていきます。
ご本人の“つらさの感覚”を尊重することが第一歩です
ご家族や周囲の方が、「それぐらい平気でしょ」と感じるような出来事でも、
ご本人にとっては「言葉にできないほどつらい」ことがあります。
私たちは、どんな思いも否定せず「その人が感じたことそのまま」を受け止める姿勢を大切にしています。
トラウマは「過去に起きたこと」ですが、その影響は今現在の暮らしにも及びます。
そして、誰かに理解されることで少しずつ和らいでいくものでもあります。