「強迫性不安障害」って何だろう?
「強迫性障害(OCD)」と診断された方と出会うことがあります。 そして、この障害が診断されることは珍しくありません。
この障害の特徴は、「自分でもおかしいと分かっていても止められない考えや行動」に苦しむ点です。
例えば「手を洗わないと不安」「鍵をかけたか何度も確認する」といった行動は一見よくあることのように思えますが、それが生活全体を支配し、本人の自由を奪ってしまうほどになると、日常生活に深刻な影響を及ぼします。
焦燥感という“こころの騒音”
OCDの方が感じる「焦燥感」は、私たちが経験する“イライラ”や“緊張”とは質が違います。
その焦燥感はしばしば「~しなければいけない」「そうしないと取り返しのつかないことが起こる」という、根拠のない強迫観念から生まれます。
この見えない不安と戦う日々は、言葉にしづらい孤独と疲労を伴います。
訪問看護の現場では、まずこの「焦燥感」が本人にとってどれだけ重い負担かを理解することが第一歩です。
訪問看護でできる支援とは?
訪問看護師として私たちができることは、「治そう」とすることではなく、「一緒に付き合い方を探す」ことです。
たとえば、
- 強迫行為を止めることを無理強いしない
- 生活の中で少しずつ“安心”の範囲を広げる練習を提案する
- 身体症状(不眠、胃痛など)を確認し、主治医と連携する
- 自分を責めすぎないようにサポートする
といった、心の“クッション”のような関わりを意識します。
家族や支援者とともに
本人が安心して生活を送るためには、訪問看護だけでは不十分です。
家族や他の支援者との連携が不可欠です。
強迫性不安障害は、「分かってもらいにくい」障害でもあるため、周囲の理解がないと症状がさらに悪化することがあります。
私たち訪問看護師は、家族や支援者に対しても、
「できるだけ安心できる環境づくりのコツ」
「“行動をやめさせる”より“気持ちに寄り添う”対応」
を丁寧に伝えていく役割があります。
小さな変化を、共に喜ぶ
強迫性不安障害の方の支援には「すぐに変化が出る」ということは滅多にありません。
しかし、だからこそほんの少しの前進を見逃さないことが大切です。
たとえば、
- 確認行為が一回減った
- 相談してくれるようになった
- 外出に少し興味を持った
そんな小さな一歩を、私たちは「変化の種」として見つめていきます。