訪問看護や訪問介護の仕事は、“人の命”や“生活”と日々向き合う責任ある現場です。 1人で高齢者宅や障がいのある方の家を訪れ、時には病状の変化に即座に判断を迫られることもある。 対応力、観察力、判断力、そして感情のコントロールまで求められる――その重さは、外からは想像以上です。
しかし、この仕事の特性として現場に1人で立たされることの多さがあります。 つまり「その瞬間に頼れる誰かがいない」。
そこにこそ、この職場の大きな課題が潜んでいます。
「しんどい」を飲み込んでしまう日々
現場では利用者や家族に対して常に穏やかな対応が求められ、裏では事務作業や報告業務、シフト調整、突発対応に追われる。ときに医師やケアマネとの板挟み、家族からのクレーム、利用者の死……。
それでも、「疲れた」「無理かも」「怖かった」といった感情を口に出せる場が、現場には少ないのが実情です。
なぜなら訪問スタッフは少人数のチームで動いており、1人が欠ければ他の誰かの負担が激増する構造。 だからこそ「自分が頑張らなきゃ」という思いが働き、誰も弱音を吐けなくなる。
結果として心身の疲労が蓄積し、燃え尽き、突然の離職につながってしまうケースも少なくありません。
「弱音」は危機管理でもある
ですが、こうした“沈黙”の職場環境は、実は非常に危険です。
訪問の仕事において、判断ミスや心理的疲労はサービスの質や安全に直結します。 だからこそ、「弱音=リスクへの警鐘」として受け止める必要があります。
たとえば――
- 「この利用者対応が怖い」と言えることで、2人体制の検討ができる
- 「精神的に限界」と言えることで、訪問数や役割分担の見直しができる
- 「最近眠れない」と言えることで、職員のメンタルヘルスの危機が回避できる
弱音とは、職員自身の命を守ると同時に、サービスの質と継続性を守る手段でもあるのです。
弱音を言える仕組みが人材定着につながる
訪問系の事業所は、慢性的な人手不足に悩まされています。 だからこそ、辞めさせないこと=働きやすさをつくることが喫緊の課題です。
そのために必要なのは「弱音を聞ける空気づくり」。
・日々の訪問後に一言ふり返れるミーティング
・1on1でのケアチェックイン
・LINEやチャットでの気軽な相談共有
・“感情の記録”を残せる簡易日報
こうした仕組みが、職員の「限界になる前に」SOSを出せる場となりえます。
命を支える人の心を守る仕組みを
訪問看護・介護は、社会の最後の砦とも言える重要なインフラです。 そこを支える人たちが安心して働けること、それはすなわち地域医療や福祉の未来を守ることでもあります。
「しんどい」「怖かった」「今日はつらかった」
そう言える職場にしていくことが、いま求められています。