1. 構造論の基本
- イド(本能的欲求):快楽を求め、苦痛を避けたい欲求
- 自我(現実的調整役):現実との折り合いをつける働き
- 超自我(道徳・理想):社会的規範や「こうあるべき」という価値観
人の心はこの三者がせめぎ合い、バランスを取ろうとしています。
2. 利用者の心理を理解するヒント
- イドが強く出るケース
・「甘い物が食べたい」「一人で歩きたい」といった強い欲求が前面に出る
・介護上リスクがある場合でも「やりたい」という気持ちが抑えられない
→ スタッフは「危険だからダメ」と一方的に制止するより、代替案を示す(ゼリーで甘みをとる、歩行器を使うなど)ことで満足度を高められる - 超自我が強く出るケース
・「迷惑をかけてはいけない」「我慢しなきゃ」と自己抑制が強すぎる
・本当は痛みや不安を抱えているのに訴えない
→ スタッフは「もっと頼っていいですよ」「できることを一緒に考えましょう」と声かけし、安心して表出できる環境を作ることが大切 - 自我が働いているケース
・「本当は甘い物が食べたいけれど、血糖値が気になるから少しにしておこう」
・「歩きたいけど転ぶと危険だから、手を借りながら歩こう」
→ 自我の働きを尊重し、成功体験を支援することが自立感や尊厳の保持につながる
3. 家族や支援者の心理にも当てはまる
- 家族が「もっと良い介護をしなければ」と 超自我が強すぎて燃え尽きてしまう こともある
- 訪問職員自身も「利用者のために全力を尽くさなければ」と理想に縛られ、心身に負担を抱えることがある。
⇒この時、自我が「今できることに集中しよう」「仲間に助けを求めよう」と現実的に調整できると、無理のないケアにつながる
4. まとめ
フロイトの構造論は、訪問看護・介護において
- 利用者の欲求や我慢の背景を理解する視点
- 家族やスタッフ自身の心理バランスを考える枠組み
を提供してくれます。
ケアは「身体の支援」だけでなく、心のバランスを整える関わりがあってこそ、利用者の安心や自立を支えることができます。