― 高齢者の水分補給について考えてみましょう ―
1. 「飲むとトイレが近くなるから…」
「夜中に何度もトイレに行きたくない。」
「外出先でトイレを探すのが大変。」
「トイレまで歩くのがつらい。」
そんな理由から、水分をできるだけ取らないようにしている方がいます。
確かに、水分を取れば尿が出ます。
しかし、トイレが心配だからといって、必要な水分まで控えてしまうことには注意が必要です。
2. 高齢になると「喉が渇いた」に気づきにくいことがあります
私たちは体の水分が不足すると、喉の渇きを感じて水分を取ります。
ところが、高齢になると喉の渇きを感じにくくなることがあります。
そのため、「喉が渇いていないから大丈夫。」と思っていても、体の水分が不足していることがあります。
暑い夏だけではありません。
暖房を使う冬や、発熱・下痢・嘔吐があるとき、食事量が減っているときなども、水分不足には注意が必要です。
3. 水分は「飲み物」だけから取っているわけではありません
体に入る水分は、お茶や水だけではありません。
普段の食事にも水分が含まれています。
例えば、
- ご飯やおかゆ
- 味噌汁やスープ
- 果物
- ゼリー
- ヨーグルト
などからも水分を取っています。
そのため、食事量が減っているときには、食事から取れる水分も一緒に減っている可能性があります。
「お茶はいつもと同じくらい飲んでいるから大丈夫」と考えるのではなく、食事量も一緒に見てみましょう。
4. 水分が足りないと、どんな変化が現れるのでしょうか
水分が不足したときの変化は、「喉が渇く」だけではありません。
例えば、
- 口の中や唇が乾いている
- 尿の回数や量が減っている
- 尿の色がいつもより濃い
- だるそうにしている
- 食欲がない
- 立ち上がったときにふらつく
- ぼんやりしている
などがみられることがあります。
ただし、こうした症状は脱水だけで起こるものではありません。
大切なのは、「いつもの状態と比べて変わっていないか」を見ることです。
5. 一度にたくさん飲まなくても大丈夫です
「水分を取りましょう」と言われると、大きなコップで何杯も飲まなければならないと思うかもしれません。
しかし、一度にたくさん飲むことが負担になる方もいます。
そんなときは、
「朝起きたとき。」
「食事のとき。」
「薬を飲むとき。」
「おやつのとき。」
「入浴の前後。」
など、生活の中で少しずつ飲む機会をつくる方法があります。
本人が飲みやすい温度や飲み物を探してみることも大切です。
6. 「飲んでください」だけでは解決しないこともあります
水分を取らない方に、「もっと飲まないとダメですよ。」
と繰り返しても、なかなか飲んでもらえないことがあります。
そんなときは、「なぜ飲みたくないのだろう?」と考えてみましょう。
「夜中のトイレが怖い。」
「歩いてトイレまで行くのが大変。」
「失敗してしまうのが恥ずかしい。」
「水やお茶が好きではない。」
「飲むとむせる。」
理由がわかれば、水分補給だけではなく、別の支援が必要だと気づくことがあります。
7. トイレの心配そのものを考えてみる
「トイレが近いから飲まない」という場合には、水分だけではなくトイレに行きやすい環境を考えることも大切です。
例えば、
- トイレまでの通り道を安全にする
- 夜間に足元を照らす
- 脱ぎ着しやすい服装にする
- 必要に応じて福祉用具などを検討する
ことで、トイレへの不安を減らせる場合があります。
また、頻尿にはさまざまな原因があります。
「歳だから仕方ない」と決めつけず、生活に支障が出ている場合には医療者へ相談してみましょう。
8. 「水分をたくさん取ればいい」とも限りません
ここで大切な注意点があります。水分は多ければ多いほど良いわけではありません。
心臓や腎臓などの病気によっては、医師から水分量について指示を受けている方もいます。
その場合には、一般的な水分補給の目安ではなく、主治医から指示されている量を優先してください。
また、むせ込みや飲み込みにくさがある方では、飲み方や飲み物の形態について専門的な評価が必要になることもあります。
9. 訪問看護では「飲んだ量」だけを見ません
訪問看護では、「今日はどのくらい飲みましたか?」だけでなく、
「食事は取れていますか?」
「尿は出ていますか?」
「口の中は乾いていませんか?」
「トイレまで安全に行けていますか?」
「飲むときにむせていませんか?」
など、生活全体を確認します。
必要な水分を取れていない場合には、なぜ取れないのかを一緒に考えることも大切にしています。
10. まとめ
「トイレが近くなるから、水分を控えよう。」
その気持ちには、何か理由があるかもしれません。
だからこそ、
- 水分を必要以上に控えていないか
- 食事量も減っていないか
- 尿の量や回数に変化はないか
- トイレに行くこと自体が負担になっていないか
- 飲み込みにくさやむせはないか
を見てみることが大切です。
そして、水分を取らない人に「もっと飲んで」と伝えるだけではなく、
「どうして飲みたくないのだろう?」と、その理由に目を向けてみる。
そこから解決できる困りごとが見つかることがあります。
水分補給も、その人の暮らしの一部です。
無理なく、安心して続けられる方法を一緒に考えていきましょう。
このコラムは一般的な健康情報として作成しています。
水分がほとんど取れない、尿が極端に少ない、ぐったりしている、意識がぼんやりするなどの変化がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。また、心臓や腎臓などの病気で水分制限を指示されている方は、自己判断で水分量を増減せず、主治医の指示に従ってください。