― 言葉にならない困りごとに気づくために ―

1. 困っていても「大丈夫」と答える人がいます

「何か困っていることはありませんか?」

そう尋ねると、

「大丈夫。」
「特にないよ。」
「まだ自分でできるから。」

と答える方がいます。
本当に困っていない場合もあります。
しかし中には、困っていることがあっても、「助けて」と言えない方もいます。

2. なぜ「助けて」と言えないのでしょうか

理由は人によってさまざまです。

例えば、

  • 人に迷惑をかけたくない
  • 弱いところを見せたくない
  • これくらい自分でやらなければと思っている
  • 何を頼めばよいのかわからない
  • 自分自身でも困っていることをうまく整理できない

ということがあります。

特に、これまで家族を支えたり、一人で頑張ってきたりした方ほど、人に頼ることに慣れていない場合があります。

3. 言葉ではなく「変化」として現れることがあります

「助けて」という言葉がなくても、困りごとが生活の変化として現れることがあります。

例えば、

  • 食事の量が減ってきた
  • 部屋が以前より片づかなくなった
  • お風呂に入る回数が減った
  • 外出しなくなった
  • 薬の飲み忘れが増えた
  • 電話や会話が少なくなった
  • 以前より怒りっぽくなった

などです。

もちろん、これだけで「助けを求めている」と決めつけることはできません。
大切なのは、「以前と何か違うな」と気づくことです。

4. 「大丈夫?」だけではわからないことがあります

「大丈夫?」

と聞かれると、反射的に、

「大丈夫。」

と答えてしまうことがあります。
そんなときは、少し質問を変えてみるのも一つの方法です。

「最近、ご飯は食べられてる?」

「お風呂に入るの、大変じゃない?」

「買い物はどうしてる?」

「最近、一番面倒だなと思うことは何?」

具体的に聞くことで、本人も困りごとを話しやすくなる場合があります。

5. すぐに解決しようとしなくても大丈夫です

困っていることを聞くと、

「それならこうすればいいよ。」

と、すぐに解決策を伝えたくなることがあります。
しかし、本人が求めているのは、必ずしも答えとは限りません。

まずは、

「そうだったんだ。」

「それは大変だったね。」

と話を聞くこと。
「話しても大丈夫な人だ」と感じてもらうことが、助けを求める第一歩になることがあります。

6. 「できていないこと」を責めない

例えば、薬が飲めていなかったときに、

「どうして飲まなかったの?」

と聞かれると、責められているように感じてしまうことがあります。
それよりも、

「飲みにくい理由が何かある?」

と聞いてみる。すると、

「薬が多くてわからなくなる。」

「飲む時間を忘れてしまう。」

など、本当の困りごとが見えてくることがあります。
行動だけを見るのではなく、その背景を考えることが大切です。

7. 支える側にも「助けて」が必要です

そして、もう一つ忘れてはいけないのが、ご家族です。
介護をしている方も、

「自分がやらなければ。」

「これくらいで相談してはいけない。」

と頑張り続けてしまうことがあります。
ご本人だけでなく、支えている人にも、

「最近、疲れていませんか?」

「困っていることはありませんか?」

と声をかけることが大切です。

8. 訪問看護だから気づけることもあります

訪問看護では、血圧や体温などの確認だけではなく、日々の暮らしにも目を向けています。
何気ない会話や表情、食事、服薬、生活環境などから、

「何か困っていることはないかな。」

と考えます。

言葉になっていない困りごとを一緒に見つけ、その人に合った方法を考えていくことも、訪問看護の役割の一つです。

9. まとめ

困っている人が、必ず「助けて」と言えるとは限りません。
だからこそ、

  • 以前との小さな変化に気づく
  • 「大丈夫?」だけで終わらせない
  • 具体的に聞いてみる
  • すぐに解決しようとせず、まず話を聞く
  • 本人だけでなく、支える家族にも目を向ける

ことが大切です。

「助けて」という言葉がなくても、その人の暮らしの中には小さなサインが現れていることがあります。
「何かいつもと違うな。」
その気づきから、そっと声をかけてみることが、その人にとって大きな支えになるかもしれません。

このコラムは一般的な健康情報として作成しています。
生活の変化が急に現れた場合や、心身の不調が続いている場合には、体調や病気が関係していることもあります。気になる変化があるときは、医師や訪問看護師などの専門職へご相談ください。